美女ジャケを黄金比分割すると女性器か乳首にいきつく!
【第6回】美女ジャケはかく語りき 1950年代のアメリカを象徴するヴィーナスたち
■女性器と乳首に収束される黄金比分解
そう書きながらも美女ジャケを見ていくと、右手で髪をかき上げているものもあるではないか。ジョージ・シアリングのスイートなジャズの名作「White Satin」。一瞬、逆版では? とも思ったりもしたが、これは右に文字を配置するというデザイン的理由でモデルが左に位置し、結果、右手でかき上げることになったのだろう。
似たように右手を上げてるザヴィア・クガートの「cha cha cha」。連載第5回でもクガート作品を紹介したが、それと同様、こちらのジャケのモデルもクガート楽団の専属歌手であり、のちにクガートが妻にしてしまったアビ・レーン。じつにエロティックで素晴らしいポーズ。
これは右手で髪をかき上げてポーズを取っているわけではなく、アビ・レーンが得意のダンスをしている瞬間のポーズを捉えたものだから、ここで書いている文脈とは違うのだが、あまりにポーズが素晴らしいので掲載した次第。
勝手に「ポーズ・ジャケ」と名付けたジャンルがあるのだが、連載第5回の冒頭で紹介した「MU CHACHAS」や、この「cha cha cha」は、ポーズ・ジャケの傑作だと思う。このくねるアビ・レーンのポーズ・ジャケを適価(ここが重要!)で入手するまで、じつに1年半ほど恋い焦がれたのだがら感慨深いアルバムなのだ。
何をそこまで? と思う人が多いと思うが、よく見て想像して欲しい。女性が踊っていてこんなキマった瞬間って、どれほど捉えられるのだろうか、って。
片手を髪にやるポーズの、では下半身はどんな仕草だったのだろう? という想像に対する的確な答えがジュリー・ロンドンの「julie」にある。片脚は曲げ、片脚は跳ね上げる。これはエロティックなポーズのひとつの典型だろう。
でも、どうしてエロティックなのだろう?
人間が最も美しいと思う比率に「黄金比」というのがある。およそ1:1.618という割合。これを用いて長方形を繰り返していく「黄金分割」といわれるものがある。高校の授業とかでなんとなく見た記憶はあるでしょう。
その黄金分割の図をジュリーのジャケに当てはめてみると……。
それが黄色い線を乗せた掲載図。上下の頂点を写真の上下に合わせると……なんと永遠に繰り返されてゆく黄金分割の四角は限りなく女性の性器を目指しているではないか!
ようするに女性の表情や足先を見ているようで、じつは私たちは性器を目指していたのだ……。やっぱり。というか、跳ね上げる脚の頂点や低めの頭の位置、それらの構成が黄金比的な美しさがあると思って、このポーズが選ばれたのだと思う。それ、黄金比の解釈間違っているでしょう、というつっこみも想定の上だが。
ともあれ黄金比の長方形の正方形の部分を消しても、残るのは黄金比の長方形、また正方形を消し、と繰り返せば永遠に小さく残っていく長方形も黄金比。「Julie」の大きな正方形を頭のなかで消してみてほしい、ということ。残るのは何か?
船上のバカンス風のジャケが楽しいペドロ・ガルシア・オーケストラの「TROPICAL CRUSE」。こちらにも黄金比を当てはめてみると、乳首に行き着きそうだ。エロティシズムの黄金比というものが存在しているに違いない。
そんな理屈は抜きにしてもこの船上のセット写真は、構図といい発色のクリアさといい、ともかくずば抜けてセンス良い。
こうして今回取り上げたジャケを見ていくと、アップジャケから徐々にひいた全身を捉えたものを紹介していることに気づいた。いやはやこれもまた黄金分割的ではないか。そして黄金比はフィボナッチ数列とも近似値なことは有名な話。となると美女ジャケを見ているだけで私たちは美しい比率を無意識に学び、数学的な秩序まで学んでいるのかもしれない。
古代ギリシャから美女ジャケまで、数千年にわたって連綿と続く西洋の美意識を、秋の夜長に思わずにはいられない。
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